「視察っていわれても、今回の運用はかなり本番の仕様とは違いますよ。
というよりまるで使い方間違えてます。
こんなコンバット仕様は今回のカスタム機限りですし。」

「ん~、そこ実は気になっててね・・・あ、今その捕獲作戦の映像見せてもらってきたんですが、こちらで確認した資料とかなり違うようでして
例えば制御が管制船に委ねられ、操縦が完全に無人化されてる点とか・・・
まぁ、それは開発中という事でそういう事なんでしょうが。」

「えぇ、DPは 無人探査艇ですよ、今後も。
GPS衛星からの地図情報とDP本体のデュアルセンサーによる360°の海中目線の情報を瞬時 に座標処理して、リアルタイムで3D情報を管制室にフィーバックする。
その情報は海底地形はもちろん、海域を動き回る全てのものを同時に追尾出来る程の精度なんです。
そんなスーパーコンピューターと巨大容量のサーバーやら通信設備を積んで、とても人なんて乗せられませんよ。

必要もありませんし。」

「ち・・・ちょっと、無人て・・・
ずっと無人ってなんですか?」

ひばりがいきなり声を荒げる。

「DPですよね?小型高速潜水艇の、あのDPの話ですよね!!!!
無人制御って?コンピューターって?でかいサーバ?いらないでしょ!
オペレーターが乗るんだから。」

すると山地が思い出したように、分厚いファイルをカバンから持ち出してくる。

「開発初期のステージでは”仮に”そういうコンセプトで進んでたみたいだね。
高速潜水艇構想・・・あ、これこれ、超電磁モーター装備で機動性を重視した、海底戦闘機開発計画・・・と、お〜こわいこわい。。。

でも、開発中のDPは常に進化してるし、想定される運用ステージや目的も自ずと変化している。
もちろんあいつはその規格から外れた乱暴なイレギュラー仕様なんだけどね。」

そういいながら眼下のドックに停泊したDPに向かってチョンチョンとを指す。

「けど、なんでそんなに有人仕様に興味があるの?
あの捕獲作戦を無人でこなしているのを見たんなら、そっちの方がインパクトを感じると思うんだけどな~。
なにしろ予測不能な動きをするあの数の相手を、たった一機で制圧したんだからさ」

「しかし海洋隊ではDPの搭乗員の育成が行われている事実もあるんですが
一応秘密裏に。」

生崎がそう言ってひばりの背中を押し出すと、一瞬よろけながらもひばりは自慢気に胸を張った。

「は?!・・・ このうるさいのが『秘密裏』?
この国の機密管理って一体。。。。
ここの『極秘』調査プロジェクトの秘匿性も怪しいもんだわ。」

「システムの優秀さはわかるが、今懸案の特殊武装生物の中には神がかり的な運動性を持つものが居るとも聞く。
もし、あのマグロ弾が全て突破された時、丸腰のDPが敵の手に落ちたら・・・」

「自爆でしょうね。
武装生物に限らず大事な技術や情報を敵に持って行かれるくらいなら、当然迅速にそれを行うべき。
そちらの組織でもそういう命令は出るでしょ?
でも搭乗員がいた場合その処置は人道的に不可能。

ま、それを避ける意味でも先鋒をマグロ弾に張らせてDP本体は遥か後方で高みの見物させてるわけだけど。」

「どんな場合でも、生身の人間が危険な現場に出て行く時代でもないし、DPもゆくゆくはもっと優れた人工知能を装備して
更に広範囲・高レベルの単独活動を目指している。
近いうち管制員が船からバックアップする必要すら無くなる訳だし。 大型調査機械であれ軍事兵器であれ、家電だって便利な方が良いに決まってるだろ?

山地のもっとも且つ理論的な自分の存在価値への否定に、ひばりは段々気が遠くなってきた。