翌朝、こぞぅは何かを待っていた。
しかしそこに現れたのはそれとは違う者だった。

「お前もわかってるだろうが、あいつは・・・あのペンギン野郎は別な世界から迷い込んできたんだ。
一人っきりでわけのわからないこの街で、どうしていいかわからねぇでいるんだよ」

そういう尋橘にこぞぅは目をくれる様子もみせない。

「同情してやれってゆうんじゃねぇが・・・なんてゆうかよぉ・・・」

言葉に詰まる尋橘、自分でも感情の整理がつかないでいる。
だからここに来たのだ。
社会に復帰して以来、当然のように屋根のあるところに住み
あたりまえのように人間と交流している。
その一方でその人間から理不尽に棄てられ、処分されていく動物たちにも関わってきた。

どういった経緯からか、元居た世界から突き放され迷っているペンギン。
それを殺すこともいとわないこぞぅ。

しかし尋橘はそれをアタマから否定しきれない。
なぜなら自らも保護というたてまえでペンギンを捕まえ、
管理しきれなければ処分という形で殺す立場だったからだ。

その時、こぞぅがジリっと動いた。

こぞぅが向いた先には武器を持ったペンギンが立っていた。
その目はまっすぐ、こぞぅの傍らにある斧を見ている。

尋橘は妙に身震いをした。

たった今まで揺れていた自分の感情があまりに安っぽく思えた。
なにせここで睨み合っているのは哀れな動物ではなく
闘争心を剥き出しにしている猛獣なのだから。


こぞぅは斧を構えて見せた。
ペンギンを挑発しているのだ。

ペンギンはこぞぅの持っている傘に似せたサーベルで突きかかってきた。
慣れない陸戦では敵の装備が効率的と考えたからだ。

こぞぅが斧で防御すると、もう片方から突きがくる。
二刀流だ。
付け焼き刃の戦術ながら、効果的にこぞぅを追い込んでいる。

こぞぅも地の利を生かし周囲の立木やフェンスを盾にしながら防御する。
しかしペンギンの素早い攻撃に打ってでられない。

隙を探っていた瞬間、ペンギンが片手のサーベルを滑らせた。

そこにこぞぅが一撃を入れると、いきなりサーベルから傘の骨が飛び出し
振り下ろされた斧を絡め取った。

ペンギンはそのまま斧ごとこぞぅの腕をひねり、転倒させて斧を奪うと
後方に一足飛びをして距離をとった。