その夜、尋橘の酒は湿っていた。
こぞぅのあの目に一瞬怯えたこと、ひと時でも自分を頼ってきたペンギンの危機に怯えたこと。
なにより怯えた自分がその場ではなにも出来なかったこと。
「こぞぅはなんも変わっちゃいない、あいつはいつもあんなだった。
変わっちまったのは俺なんだよなぁ・・・」
月明かりのもと、こぞぅは斧を握り見つめていた。
よく見ると柄はカラカラに干からび、刃も錆びついてボロボロだ。
ペンギンがどこかの海で使っていたのだろうが、丘の環境には耐えられないものなのだろう。
今朝、こぞぅがペンギンの食らわせた一撃は思いも寄らない程のクリティカルヒットだった。
いくら屈強な生き物でもあれを受けてただでは済まないはずである。
しかしこの錆びついた斧ではかすり傷を負わせるのがやっとだった。
それでもこぞぅは斧を捨てようとはせず、バックパックにしまった。