一瞬の出来事だった。
ペンギンは自らの”誇り”を取り返したのだ。

尋橘は内心胸をなでおろした。
なんにせよ決着がつけばこの場はこれで収まる。

ペンギンは今まで手にしていたサーベルを放り出し
斧を改めて握りしめた。
こぞぅもこれ以上ペンギンを相手にするつもりもなかった。

しかしペンギンはその場を立ち去ろうとせず、
斧を構えてこぞぅを睨んだ。

こぞぅは起き上がるとペンギンの方に向き直り
バックパックの一本差しに指をかけた。

それを見るとペンギンは尚も腰を落とし深く構える。

こぞぅは苛立っていた。
たかが飛べないトリ如きが、
およそ自分には持ちえない”誇り”とやらに目を輝かせ向かってくる。
それが不快でならなかった。

今度はこぞぅが先に仕掛けた。
ペンギンがしていたように傘のきっさきを突き続けた。
慣れた武器を手にしたせいか
先程より軽やかに動くペンギン。

斧で傘を止めたかと思ったら、
次は両者が激しく打ち合う展開に。

その様相を目の当たりにした尋橘はたまらず叫ぶ。

「こぞぅ!それがお前のやり方かぁ!!いいねぇ、そうでなきゃ面白くねぇや!!!
所詮俺たちゃ野良犬だ。でもよ、同情されるなんざまっぴらゴメンだ!
生きたきゃちからづくで生き抜く、死にたきゃ勝手にのたれ死ぬ。今いる世間なんざ
どこだろうと関係ねぇ!そう言いてぇんだろ!!」


こぞぅの頭から湯気が立ち始めた。
興奮して尚、戦闘は激しくなる。