翌朝、寝ている尋橘を仔ぶたがゆり起こし散歩をせがんだ。
どうやらペンギンが行きたい場所があるようだ。

尋橘は仔ぶたと連れ立ってペンギンの後について行く。

川のほとりで立ち止まるペンギン。
どうやらここから丘にあがったようだ。

あがってきたということは、それまでは川の中にいて
そこへはどこからか流されてきたということか。

しかしここではペンギンがどこから来たのかの手がかりはわからない。

その時、ペンギンが急に何かを見つけ走り出した。

「ピ〜♪」

仔ぶたもなにか嬉しそうに同じ方向に走り出す。

なにごとかと尋橘が駆け寄った先には、ランドセルに斧を挿したこぞぅが居た。
その後を全力でペンギンが追いかける。

「やべ!またやる気かよ」

しかしペンギンはこぞぅではなく斧に向かって飛びかかって行った。
それよりわずか速くこぞぅが斧を抜きペンギンを払い落とす。

向き直り尚、斧を両手で構えるこぞぅ。
その目は妙に高揚していた。

武器を手にしながらそれを使う機会もなく。
まさに手持ち無沙汰のところに、またとない獲物が飛び込んできたのだ。

「おいよせ!そいつは容赦ねぇぞ!」

尋橘はペンギンを引き戻そうとするが、ペンギンは一歩も引かない。
前のようにただ闇雲に人に絡んでいたときとは違い、
今ばかりは目的をもってこぞぅに挑んでいる。

しかも今度は武器を持った相手に丸腰の状態で。

こぞぅはペンギンめがけて躊躇なく斧を振り回す。
それは威嚇はなく明確に斬りこもうとしている。

ペンギンはそれを紙一重でかわしながらこぞぅの手元に仕掛けようとする。

一瞬スキが出来たペンギンにこぞぅの一撃が入ると
辺りに血が飛び散る。

「まてよ!殺す気か!!」

思い余って尋橘が叫ぶと、こぞぅはそのまま微動だにせず目線だけをそちら向けた。

するとペンギンがよろめきながら立ち上がる。
すかさずこぞぅが斧を振り上げると、ペンギンは川に飛び込んだ。

こぞぅはそれを別段追いかけるでもなく、斧をランドセルに戻すと行ってしまった。
尋橘もそんな両者を追うことが出来なかった。

「・・・俺は今なにを怯えたんだ・・・?」