「そんじゃお先」
結局その日はペンギンは見つからず、尋橘は事務所を出た。
家に帰る道すがら、尋橘はなにかが後を付けてくる気配に気付く。
しかし振り返る事はせず、やや見通しの悪い暗がりの角を曲がる。
「俺になんか用事かよ!・・・っておい」
待ち伏せしたつもりの尋橘が逆に追ってきたものの姿に驚いた。
そこに居たのはほどけかかった包帯をぶら下げて、うなだれてボロボロ涙を流しているペンギンだった。
「なんだよ、どうしたんだよ・・・ってどうしたもねぇもんだが。
困ったなおい、なんなんだよ一体?」
ペンギンはただ身体中を震わせて泣いていた。
「結局知っている人が、世話をやいてくれた人が骸城さんだけだったんじゃないかねぇ。
逃げ出したところで行く宛もなくて不安になったんじゃない」
電話の向こうで保護課の同僚が言う。
「とにかくそういうことならさ、一晩面倒みてあげてよ。明日の朝こちらから迎えにいくからさ」
「おう、そうするわ。んじゃ」
そう言うと尋橘は電話を切った。
尋橘の部屋では仔ぶたがペンギンとなにやら意思疎通をしている様子だ。
言葉が通じるのか、言葉がないから通じあえるのか。