「はい、こちら保護課。・・・は?ペンギンが道ばたで子供を襲ってる?
場所は・・・わかりました、一応警察の方にも知らせます」
「おいおいなにわけわかんねぇ話してんだよ。イタズラ電話じゃねぇのか?」
電話のやりとりを横で聞いてた男が同僚に言う。
「とにかく行ってみましょう、骸城さんも一緒に来て。話が本当ならちょっとした捕り物になるかもしれないから」
骸城尋橘(むくろぎじんきち)
男の名前である。
一応、社会生活を営む上で近頃は戸籍にある名前を名乗っている。
車で到着すると、現場は既に警官ややじうまでちょっとした人だかりになっていた。
「・・・なんでペンギンが血まみれなって倒れてんだよ。
おまわりさん、あんたがやったのかい?」
「いや、われわれが駆けつけたときには既にこの状況でして。
襲われた子供というのも姿が見えないし」
「うちに知らせてきたのは誰だい?なにがあったか見てたんだろ」
すると買い物帰りと思しき女性が
「”子供”って言ったのは最終的にそう見えたからなんですけど
最初は黒いかたまりをペンギン追いかけていて、
カラスかな?と思ったんですけど
なんかカラスにしては大きいかなぁ・・・って。
そうしたら黄色いの長靴と赤いランドセルが見えたんで・・・」
尋橘はすぐに悟った。
「あいつか・・・まぁ、それで返り討ちあったってことか・・・
で、死んでるんなら清掃局の仕事になるがどうなんだい?」
するとペンギンはムクリと起き上がった。
「ちっ、生きてやがるか面倒くせぇなぁ」
ため息まじりに車から捕獲用のカゴを出してくると、今度は尋橘にむかってわめきたて始めた。
「うるせぇな」
尋橘は口の中に足を突っ込みペンギンを地面に踏みつけた。