こぞぅのトラップから逃れ、どこをどう来たのか判ら ないままこぶたは河にかかる陸橋のふもとに迷い込んでいた。彼もまた不眠不休で逃げ回っていた。
やっと人の気配から解放された安心からか、こぶたは倒れ込みそのまま眠ってしまった。


こぶたは夢を見た。・・・それはいままで体験したことのない感覚。空腹・・・。
「ピ〜!ピ〜!」 餌をねだると優しい飼い主が大きな餌箱を持ってきてくれる。中に入っているのはお金じゃない、暖かいミルクに浸されたパン。「おいし い」そう感じられるこぶたは冷たく固い陶器の体ではなく、生身の体を手に入れたのだ。
餌箱を空にすると、もうお腹がいっぱい。でもとっても幸せ。そしてまたいっぱい遊ぶとまたお腹がすく・・・・。
やがてこぶたは大きくなり、立派な大人の豚になった。
人に育ててもらったのだから、今度は自分が人の役にたたなくちゃいけない。でもそれは働く事ではない。
自らが人の糧となる事・・・。結局豚にはこれしか出来ない。結局豚はこれしか求められない。
でも死ぬのは怖い。優しかった飼い主が大きな包丁を持って追いかけてくる。
豚は必死で逃げる。しかしそのうち力尽きて倒れ込んだ時、誰か声が聞こえた気がした。


『所詮この世は弱肉強食。
 歩みを止めた者は、先へ進む者の糧となれ・・・。』