「さてと・・・帰るとすっか」

既にロレツの回ってない口でそう良いながら男は立ち上がる。
男から出た言葉にこぞぅが軽く表情を変えた。

「おぅ?なんで〜、その意外そうなツラぁ〜。俺にだって立派な家があんだぞぉ〜。賃貸だけどよ」

更にこぞぅが疑惑の目つきをする。

「へっ、そこらの段ボールハウスじゃね〜ぞ。コンクリート建築の一戸建てよぉ。へっへっへ・・・あれだぁ」

男が指さした先は小さな公園の公衆便所だった。こぞぅは妙に納得した。正に物は言い様である。

「たまに仕事行ってる時ゃ〜あるが、大体あそこで寝てるからよ〜。用があったらいつでも来な」

一般の利用者はたまったもんじゃないだろう。

「じゃ、また明日くるかよ相棒」

自販機を軽くポンポンと叩くと男は“家路”をゆるゆると歩いて行った。
それを見送るとこぞぅも歩きながら夜の闇に消えて行った。