そしてワンカップ酒の自販機を愛おしげに見上げた。

「シガラミが無えって〜のはいいもんだ。肩の力が抜けると人間素直になれる。
こいつはカネにはうるせ〜が、いつもここで俺を待っててくれる。それっぽっちでも裏切られね〜
事がありがて〜と思えるってのも素直になったってぇ事なのかね〜。」

こぞぅもその自販機を見上げた。よくよく見ればショーケースには大きなヒビが入り、その中の
蛍光灯は忙しく点滅をくり返している。随分古く、くたびれた機械だ。
しかし男にとってはこの世で唯一の心のより所なのだろう。