「調子の良い時はおだてながら俺に寄って来る奴も多くてよ、そんな連中に悪い気もしてなかった。
毎日忙しく働いたよ。家族もいたしな。
ところが世の中がひっくり返っちまってよ。気が付きゃ〜テメーの会社も火の車だ。
そうなると世間の連中や下のもん(社員)達まで手のひら返したように離れていきやがった。
家庭が暖かいもんだなんて、ありゃ〜嘘だな。あっちこっち金策に走り回ってる俺を後目に
女房とガキは勝手に夜逃げしちまって・・・家屋敷も処分されてキレイにもってかれたよ。
結局会社も潰れて帰るところも無くなって、気がついたらこの街に流れてきてた。
ここじゃあ知った顔は居ね〜し、借金取りも追って来ね〜。」

ついてない半生を語りながらも男はなぜか小ざっぱりした笑みを浮かべる。