さき程の騒ぎとは一転、ワンカップ酒を手に和む男とこぞぅ。

「へ〜・・・じゃあ、お前さんも身寄りの無い口かい」

男はしみじみ傍らに座るこぞぅを見て言う

「・・・ま、あるようにも見えね〜がな」

無理なくそう思えてしまうこぞぅの風体はたしかに何処か妙である。

「気にするこた〜ね〜さ。独りってのも身軽でいいもんだ」

男の風体も人に言えた義理でもない。しかしやはり何かが引っかかるのか・・・
「ところでよ、何で傘2本も持って歩いてんだよ?」

そう聞かれるとこぞぅはおもむろに横目で男を見上げた。
その目つきに、男はバツが悪そうに目をそらす。

「へへ・・・、別に言いたくなけりゃあ聞かないがな・・・。人間色々あるもんだ。
こう見えても昔は俺だって『社長』なんて呼ばれてた頃もあるんだぜ」

他人に対しては詮索好きではないものの、男はこぞぅが気に入ったのか自らの身の上を語り始めた。