「なんだ?!保安船がもう来たのか?」

山地が船外に身を乗り出す。

「いや、警告が無かった。それにあの爆撃は海中からだ」

生崎がモニターに目を戻した時、その視界を何物かが横切った。

「イルカ・・・?」

度重なる痛手に怒り狂ったシャチが無茶苦茶に暴れ出す。
巨大な2つのアイアンクローを、四方にまるでヨーヨーのように繰り出しては引き寄せる。

それをものともせず、急接近しながら挑発するようにバルカンを乱射する白いイルカ。

息継ぎも出来ない程の攻撃と急速な離脱を繰り返され、シャチの怒りの矛先は完全にイルカにのみ向けられていた。

UNKNOWNとシャチに距離はどんどん離れてゆく。

そこに保安船が管制船に拡声器で向けて呼びかけてきた。

「そこのボート、ここは無許可の民間船が立ち入っていけない海域です。直ちに・・・」
すると生崎が官用周波数で保安船に呼びかける。

「こちら通報者の生崎海曹長です、この海域に於いては民間船に同乗して調査活動中です。
侵犯艦はステルス型の潜水艦の模様。こちらで確認した当該艦の現在位置座標を知らせする・・・」

保安船は無線で警告後、海底に向けて数個のソナーを投下。

結局保安船に応答する事もなく姿を確認される事もないまま、UNKNOWNは領海の外に姿を消していった。

そしてその時、既にイルカもシャチもどこかに泳ぎ去ってしまっていた。



「・・・ホワイト・・・ファイター・・・」

管制船室の隅にいたひばりがつぶやく。

「え?なに?」

状況の収拾に忙しそうな天河が振り向きもせず聞く。

「いえ・・・なんでもありません」

尚も騒々しい船内、ひばりは一人デッキから海面を睨みつけた。

「ホワイト・ファイター、あれが・・・初めて見た・・・ちっくしょう!」